グローバリゼーションの進展やITを筆頭とした様々な分野の技術革新、そして、少子高齢化に伴う労働力人口の減少トレンド。人材採用の競争環境は激化の一途を辿っています。
これまでの採用活動のやり方を続けるだけでは年を追うごとに採用成果が出づらくなっていく流れの中においては、新しい採用手法を取り入れながら、これからの採用活動のやり方を模索することが求められます。
そして、新しい採用手法の文脈では、求人サイトや人材紹介会社経由の応募を待つ “待ちの採用” に依存するのではなく、企業自らが求職者にアプローチする “ダイレクトリクルーティング(攻めの採用)” に打って出ることが重要であると言われます。
しかしながら、ダイレクトリクルーティングに対して「思ったような採用成果が出ない」と、ネガティブな印象を持たれている採用担当者の方は少なくありません。
なぜ、ダイレクトリクルーティングで採用成果が出ないのでしょうか。どうすればダイレクトリクルーティングで採用成果を出せるようになるのでしょうか。
本稿では「ダイレクトリクルーティングの成功に必要な5つのポイント」と題し、ダイレクトリクルーティングを成功させる上で意識すべきこと・実践すべきことについてのポイントを解説していきます。
目次
ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリット
本題であるダイレクトリクルーティングの成功に必要な5つのポイントの解説に入る前に、まずはダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットを整理します。
ダイレクトリクルーティングのメリット
1. 採用コストを抑えることができる
ダイレクトリクルーティングサービスでは、求人サイトや人材紹介サービスが担っていた領域(応募を獲得する領域)を企業自らが担う分、相対的に採用コストは低くなります。
2. 転職潜在層にアプローチできる
自分の市場価値を知りたい。好条件であれば転職を検討しても良い。中長期的な視点で将来の転職先候補に当たりをつけておきたい。これらの動機で求人サイトや人材紹介会社に登録せずにダイレクトリクルーティングサービスを利用する転職潜在層にアプローチできます。
3. マッチング精度を高められる
ダイレクトリクルーティングサービスではマッチングプラットフォームを解放しています。マッチング業務は企業側に委ねられているので、各企業はマッチング精度を高める工夫をすることが可能になります。
ダイレクトリクルーティングのデメリット
1. 業務負担の増加
マッチングプラットフォーム上でのスカウト対象者の探索活動やスカウトメールの文面作成の業務負担が増加します。
2. 大量採用には向かない
採用活動において質(マッチング精度)と量(応募者数)は基本的に相反します。ダイレクトリクルーティングは質を高める手段としては有効ですが量を追求するには不向きです。
3. 面接に繋げるまでのコミュニケーションが必要
スカウトメールのオファーに承諾したタイミングでは企業理解度が浅く、志望度も高まっていない状態(気持ちとしては応募保留に近い状態)のダイレクトリクルーティングサービス利用者に対して、どのようなコミュニケーションをして応募意向を高めて面接を受けてもらうのか。この面接に繋げるまでのコミュニケーションを上手く設計する必要があります。
※ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットについて、より詳細な内容にご興味のある方は、是非、下記の記事をご覧ください。
・ダイレクトリクルーティングとは何か? 意味・メリットデメリット・実践方法をまとめて解説!|HRアナリスト
ダイレクトリクルーティングの成功に必要な5つのポイント
1. 適切な目的・組織体制
ダイレクトリクルーティングはどんな採用課題でも瞬時に解決することができる魔法の杖ではありません。ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットを踏まえて、
- 大量採用目的ではなく、“待ちの採用” では出会えない優秀層の採用に目的を置く
- スカウト対象者の探索活動やスカウトメールの文面作成、応募意向を高めるコミュニケーション等の業務負担の増加に対応できる採用チームの体制を整える(ダイレクトリクルーティングの実践=新規業務の追加と捉えた人員拡充)
等の適切な目的・組織体制のもとにダイレクトリクルーティングに取り組むこと。それがダイレクトリクルーティングを成功させるための第一歩になります。
2. 長期視点
新規事業の9割が失敗すると言われるように、新たな取り組みには想定外の出来事が起きる確率が高く、それゆえ、失敗が付き物です。
当然、新規性の強いダイレクトリクルーティングの取り組みも一朝一夕にはいきません。
ダイレクトリクルーティングに取り組み始めた初年度に大きく失敗したとしても、その失敗を糧にして、長期視点で腰を据えて改善に取り組んでいくことが重要です。
3. マーケティング視点
求人サイトや人材紹介サービス等の “待ちの採用” では、採用支援会社側にマーケティング機能を委ねることができますが、企業自らが求職者にアプローチしていく “攻めの採用” ではマーケティングの役割は企業側に委ねられます。
- 採用したい人材像は?
- 採用したい人材にとって自社はどのように見えるのか?
- 採用したい人材はどんなニーズを持っているのか?
- ニーズを踏まえてどのような情報を提供すべきか?
- 提供する情報は競合他社と差別化できているか?
これらのマーケティング視点に立ったダイレクトリクルーティングの実践無しに、効率的で効果的なダイレクトリクルーティングが実現することはありません。
4. 特別感のあるスカウトメール
“待ちの採用” において企業が求職者に対して志望理由の説明を求めるように、“攻めの採用(ダイレクトリクルーティング)” では求職者が企業に対してスカウト理由の説明を期待しています。
ダイレクトリクルーティングサービスを利用する際に効率化の観点で定型のスカウトメールを使用するとしても、可能な限り、一人一人の求職者に対する個別メッセージを添える配慮をできるかどうか。
それがダイレクトリクルーティングの成否を分けると言っても過言ではありません。
5. 面談・面接の個別対応
ダイレクトリクルーティングの実践は、ダイレクトリクルーティングサービスを利用した採用母集団形成に限りません。
ダイレクトリクルーティングの本質は、これまで出会えなかった・出会えても採用できていなかった優秀層の採用への挑戦であり、採用母集団形成というのは始まりに過ぎません。採用母集団形成後の面談・面接を通じた口説きがより重要であることは明らかです。素晴らしく優秀な候補者を選んだところで、候補者から選ばれなければ意味がありません。
「効率」の観点で10人の採用候補者に対して1通りの面談・面接をする(予め決められた面接官が定型的な質問をする/定型的な自社のPR情報を伝える)のではなく、
採用成果を創出する「効果」の観点に立ち、10人の採用候補者に対して10通りの面談・面接をする(採用候補者と相性の良い面接官を柔軟にアサインし、採用候補者の魅力を引き出す質問を工夫し、採用候補者の知りたい情報を伝える)ことができるかどうか。
この「面談・面接の個別対応」の巧拙が優秀層の口説きの成否(候補者から選ばれるか否か)に直結します。
ダイレクトリクルーティングの成功に貢献するHRアナリスト
HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げる(面接CXを高める)ことで内定辞退や選考辞退を防ぎます。
このHRアナリストは、ダイレクトリクルーティングを実践するためのツールとして有効活用することが可能です。
面談・面接の個別対応を実現することでダイレクトリクルーティングの成功に繋げる、HRアナリスト
優秀な人材が常に不足する今の時代、候補者を選ぶ(評価目的のための)面談・面接と同じぐらいに、候補者から選ばれる(志望度向上・選考辞退防止のための)面談・面接が重視されています。
そして、候補者から選ばれるための面談・面接を実現するには、候補者満足度(候補者の面談・面接に対する満足度)を高めるコミュニケーションが必要です。
この候補者満足度に第一に影響する要素は「面談・面接担当者」です。
- この面談担当者は自分にとってロールモデルになり得る人だと感じた。自分もこの人のような野心を持ち続ける人材になりたいと思えた(志望度が上がった)
- 自分は真面目でおとなしい性格なので、この会社の雰囲気には合わないかもしれないと思っていたが、今回話をした面接官は自分と同じようなタイプの人で安心した。自分もこの会社でやっていけそうな気持ちになった(志望度が上がった)
- 今日の面談担当者は自社の福利厚生や安定性をPRされていて違和感があった。自分は成長を求めている中で勢いのある会社が良いと考え、この会社に応募したのに「中の人」が安定志向だったので気持ちが沈んだ(志望度が下がった)
等、候補者は良くも悪くも面談・面接担当者の影響を受けてしまいます。面談・面接が人と人のコミュニケーションである以上は、候補者と面談・面接担当者の互いの相性は無視できません。
候補者と相性の良い面談・面接担当者をアサインする際のキーワードは「共通点」です。
候補者は面談・面接担当者に対して
- 属性(年齢・性別・出身)
- パーソナリティー(個性・性格)
- キャリア(職歴・キャリア観)
等での共通点を見出した際に、親近感や安心感、共感や憧れを抱きます。
新卒採用活動では、候補者である学生と近い年齢の若手社員を面談・面接担当者としてアサインするケースが多く見受けられますが、これは「年齢」での共通点があるという意味で一定の効果が期待できます。しかし、属性の共通点だけで面談・面接担当者のアサインを決めるのは不十分です。
面談・面接の個別対応をする(10人の採用候補者に対して10通りの面談・面接をする方向性を志向する)ダイレクトリクルーティングの観点では、パーソナリティーやキャリアの共通点を踏まえた面談・面接担当者のアサインを実行することが望まれますが、それは簡単にできることではありません。
まずは、社員のパーソナリティーやキャリアに関する情報を集める必要があります。
そこで、HRアナリストでは候補者と面談・面接担当者となる社員の両者にアンケートを実施し、パーソナリティーのタイプ診断を行います。そうすることで、候補者との相性の良い面談・面接担当者アサインの実現を後押しします。
そして、候補者満足度に第二に影響する要素は「面談・面接内容」です。
面談・面接担当者との相性がどれだけ良かったとしても、面談・面接内容がいまいちであれば候補者満足度は半減してしまいます。
候補者に合った(候補者が満足する)面談・面接を実現するためには高度な「面接力」が必要です。
- 候補者の強みをきちんと引き出す力
- 候補者が本質的に知りたい情報を見定める力
- その情報を候補者に伝わる文脈・粒度感で伝える力
これらの面接力を上げるには、面接官トレーニング研修を実施する、熟練者の面接に同席して面接技術を学ぶ等の地道な努力を重ねる他、面接力不足を補うツールとしてHRアナリストを活用する方法があります。
HRアナリストでは、パーソナリティーのタイプ診断の結果として「候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法(候補者のタイプに合った面接に関するアドバイス・動機づけのポイント)」が記載された分析シートを発行します。
この分析シートを活用しながら面接を行うことで、新任の面接官であっても熟練の面接官と同じような面接が可能になります。
HRアナリストのご案内は以上となりますが、いかがでしたでしょうか?
「面談・面接の個別対応」は、ダイレクトリクルーティングの成功に必要な5つのポイントの中で最も重要なポイントですが、いざ取り組むとなると難しい(工数的に現実的ではない)という理由から多くの組織で “ないがしろ” にされがちな状況があります。
もし、貴社の採用活動でも同じような状況がある場合は、HRアナリストを、この「面談・面接の個別対応は重要だけど、やるのが大変だからやれていない問題」を解決するためのソリューションとしてご検討いただければと思います。
・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
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著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社