「ダイレクトリクルーティングとは何なのか?」
「ダイレクトリクルーティングを導入すべきかどうかのポイントを知りたい」
「ダイレクトリクルーティングを実践していく上で成功のコツを知りたい」
本稿では、これらの悩みや課題感をお持ちの方に向けて、ダイレクトリクルーティングの意味やダイレクトリクルーティングサービスが普及している背景、そして、ダイレクトリクルーティングサービスのメリット・デメリット・実践ノウハウをまとめて解説します。
目次
1. ダイレクトリクルーティングとは?
ダイレクトリクルーティングとは、その名の通り、企業が求職者に直接(ダイレクトに)コンタクトを取る採用手法です。
ダイレクトリクルーティングは「求人サイトからの応募を待つ」「人材紹介会社からの推薦による応募を待つ」等の “待ちの採用” との対比で “攻めの採用” と呼ばれています。
<“待ちの採用” と “攻めの採用” の違いのイメージ>
“待ちの採用” と “攻めの採用” との本質的な違いは『採用母集団形成の主体』にあります。
“待ちの採用” は仲介会社(求人サイト運営会社や人材紹介会社)が採用母集団形成の主体となり、全体最適的に採用母集団を大きくするように動きます。しかし、仲介会社の動きは多くの場合においてブラックボックスです。企業側が「何とか応募を増やしたい」と考えたところで選べる打ち手は限られます。
一方で、企業自らが採用母集団形成の主体となる “攻めの採用” の場合は、応募を獲得する役割を自分たちで担うことになります。「何とか応募を増やしたい」と考えながら仮説検証をする(PDCAを回す)ことが可能になります。
2. ダイレクトリクルーティングサービスが支持される理由
ダイレクトリクルーティングは一過性のバズワード(流行語)ではありません。
ダイレクトリクルーティングで有名な北米企業のLinkedInの日本上陸は2011年。日本企業のWantedlyがダイレクトリクルーティングサービスを開始したのが2012年。
その時代から日本の採用市場でダイレクトリクルーティングサービスが育まれてきた結果、今や、求人サイトと人材紹介サービスに並ぶ第三の選択肢として求職者の支持を集めるに至っています。
Wantedlyの個人ユーザー数は271万人、企業ユーザー数は3.6万社に達している事実(参考:2020年8月期 決算説明資料)からも、ダイレクトリクルーティングが日本の採用市場での存在感を強めていることが分かります。
ダイレクトリクルーティングサービスが求職者から支持されているのは何故でしょうか?
その理由(求職者がダイレクトリクルーティングサービスを利用する動機)を知ることはダイレクトリクルーティングを正しく実践していく上で極めて重要です。
理由1. 自分という人間を見てもらえている
求人サイトから応募がある。
人材紹介会社からの推薦が上がってくる。
これらの出来事が起きた時に、採用担当者は「自社が認められている、必要とされている」、そんな嬉しい感覚を覚えると思います。
これは求職者も同じです。
企業から「あなたに興味があります」といった旨で直接コンタクトをもらう瞬間は、自分のことを認めてくれている実感が湧きます。自分という人間を見てもらえているのだなと感じて嬉しくなります。
理由2. 自分に合った企業からアプローチしてもらえる
採用活動と就職・転職活動は表裏一体です。
“待ちの採用” の場合、求職者側は “攻めの就職・転職活動” となり、“攻めの採用” の場合、求職者側は “待ちの就職・転職活動” となります。
つまり、ダイレクトリクルーティングサービスを利用する求職者は、登録を済ませた後は、自力で応募企業を探さずとも自分に合った企業からアプローチが来ること( “待ちの就職・転職活動” )に大きなメリットを感じています。
理由3. みんな使っているから自分も使う
日本におけるダイレクトリクルーティング黎明期(2010年代前半)であれば、ダイレクトリクルーティングはかなりマイナーな存在でした。
しかし、今の時代のダイレクトリクルーティングサービスは求人サイトや人材紹介会社と並ぶ就活・転職活動の選択肢として求職者の間に定着している状態です。
ダイレクトリクルーティングサービスは「みんなが使っているから自分も使う」ステージに突入していると考えられます。
3. ダイレクトリクルーティングサービスを導入するメリット
求職者から支持されるダイレクトリクルーティングサービスを活用することは、企業側にとって大きなメリットがあります。
具体的にダイレクトリクルーティングサービスにはどのようなメリットがあるのでしょうか。「求人サイト」や「人材紹介サービス」等の主要な採用支援サービスと比較した際のメリットをご紹介します。
メリット1:採用コストを抑えることができる
ダイレクトリクルーティングサービスでは、求人サイトや人材紹介サービスが担っていた領域(応募を獲得する領域)を企業自らが担う分、相対的に採用コストは低くなります。
「知恵と工夫で採用コストを抑えることができる」。これはダイレクトリクルーティングサービスの最も分かりやすいメリットであると言えます。
メリット2:転職潜在層にアプローチできる
転職顕在層(現時点で転職意思が有る層)は目に見える氷山の一角に過ぎず、氷山の水面下には転職顕在層よりも何倍も規模の大きな転職潜在層(現時点で転職意思が無い層)がいます。
求人サイトや人材紹介サービスが主流であった時代において転職潜在層は(それらのサービスに登録しないという意味で)まさに目に見えない層でした。
しかし、今の時代は違います。
「自分の市場価値を知りたい」
「好条件であれば転職を検討しても良い」
「中長期的な視点で将来の転職先候補に当たりをつけておきたい」
このような動機で、求人サイトや人材紹介会社に登録せずにダイレクトリクルーティングサービスを利用する人が増えています。
こういった転職潜在層にアプローチできる点(採用母集団形成の探索範囲を拡大できる点)はダイレクトリクルーティングサービスの大きなメリットです。
メリット3:マッチング精度を高められる
求職者と企業のマッチング精度は、そのビジネス構造に大きく依存します。
求人サイトは広告ビジネスです。多くの求職者をサイトに集めて、そこに多くの企業の求人広告を掲載することで収益の最大化を図ります。この規模を追求するビジネスにおいてマッチング精度は二の次です。
人材紹介サービスは完全成果報酬ビジネスです。毎月コンスタントに成約数を上げるために人材紹介会社の社員には売上目標が設定され、各社員は数字に追われます。その結果として「確率上、成約には求職者1人当たり30件の求人紹介が必要である」「今月はA社の〇〇の求人が決まりやすいから、そこを優先的に紹介すべし」等のマッチング力学が働き、公正であるべきマッチングが歪められてしまう可能性があります。
一方、ダイレクトリクルーティングサービスではマッチングプラットフォームを解放しいます。マッチング業務は企業側に委ねられているので、各企業はマッチング精度を高める工夫をすることが可能になります。
4. ダイレクトリクルーティングサービスを導入するデメリット
ダイレクトリクルーティングサービスはどんな採用課題も簡単に解決する “魔法の杖” ではありません。
ダイレクトリクルーティングサービスのデメリットを吟味することで、自社がダイレクトリクルーティングサービスを導入・実践すべきか否かを判断する必要があります。
デメリット1:業務負担の増加
ダイレクトリクルーティングサービスでは企業自らがマッチング業務を担う必要があります。具体的には、マッチングプラットフォーム上でのスカウト対象者の探索活動やスカウトメールの文面作成の業務負担が増加します。
スカウトメールはテンプレート(ひな形)を使いまわすことも可能ですが、求職者がダイレクトリクルーティングサービスに期待していることは「自分という人間を見てもらえていること」と「自分に合った企業からアプローチしてもらえること」です。
一人一人の求職者に対して「あなたの〇〇な点が当社の△△にマッチしている」と伝えるためのスカウトメールを作成するには時間を要します。
デメリット2:大量採用には向かない
採用母集団形成における質(マッチング精度)と量(応募者数)は基本的に相反します。
量を追求すると質が疎かになりますし、その逆もまた然りです。ダイレクトリクルーティングは採用母集団の質を高める手段としては有効ですが量を追求するには不向きです。
大量採用には向かないと割り切る必要があります。
デメリット3:面接に繋げるまでのコミュニケーションが必要
ダイレクトリクルーティングサービス利用者はスカウトメールを受け取ったタイミングで、その企業のことを初めて知るケースが少なくありません。
届いたスカウトメールの内容に興味が湧けば「この企業のことはまだ深く分からないが、ちょっと興味が湧くし、先方も私に興味を持ってくれているのだから会ってみよう」という思いでオファーを承諾します。
スカウトメールのオファーに承諾したタイミングでは企業理解度が浅く、志望度も高まっていない状態(気持ちとしては応募保留に近い状態)であるダイレクトリクルーティングサービス利用者に対して、どのようなコミュニケーションをして応募の意向を高めて面接を受けてもらうのか?
面接に繋げるまでのコミュニケーションを上手く設計する必要があります。
5. ダイレクトリクルーティングに関するFAQ
【Question】ダイレクトリクルーティングのツールにSNS(FacebookやTwitter)を活用するのはお勧めですか?
まず、「企業アカウントをFacebookやTwitter上に開設・運用する」という手法はお勧めできません。この手法で成功している企業がほとんどないというのが理由です。
一方で、「社員個人のFacebookやTwitterアカウントを活用する」手法は、SNSに強い社員が社内にいる場合、かつ、採用活動に協力いただける場合にはお勧めです。
※SNSの本質は人と人の個人同士が繋がることにあります。そのような中で、採用活動を目的とする企業アカウントが人が繋がることは想像以上に難しいのですが、人(企業の中の人)と人との繋がりは自然に生まれている状況があります。
【Question】こんな企業にはダイレクトリクルーティングをお勧めするし、こういった企業にはダイレクトリクルーティングをお勧めしないという基準のようなものはありますか?
絶対的な基準はありませんが、判断の目安となる「ダイレクトリクルーティングのお勧め度を自己判定するチェックリスト」を共有します。
当てはまる項目が多い程、お勧め度が高くなります。逆に当てはまる項目が少ない場合は、お勧め度は低くなります。
<チェックリスト>
- 採用人数が少ない(または、量よりも質を重視した採用を重視している
- 求人サイトや人材紹介サービスのマッチング精度に課題感を持っている
- 転職潜在層にアプローチする必要性が高い(採用母集団形成の探索範囲を拡大したい状況にある)
- 採用予算が少ないものの、採用工数には余力がある
- 全社的に採用活動に協力的である(人事部の協力要請に対して各部門が快く協力してくれる状態にある)
- 社内に口説き(動機付け)の上手い面接官やリクルーターが多い
- 今後、ダイレクトリクルーティングの重要性が高まっていくと考えている
6. ダイレクトリクルーティングの実践ノウハウ
ダイレクトリクルーティングサービスを利用することは採用母集団形成の観点では重要ですが、それはダイレクトリクルーティングの実践の『点』の一つに過ぎません。
点と点とを繋ぎ合わせることで一本の『線』としてダイレクトリクルーティングを実践することが大切です。
それではダイレクトリクルーティングの実践を線で捉えるためにはどのような点が必要になるのでしょうか。一つずつ解説します。
(1)採用したい人材像を固める
ダイレクトリクルーティングに限らず採用活動全般に言えることですが、経営層や現場部門の責任者の指示を鵜呑みにした「採用したい人材像」が現場部門が本当に必要とする人材要件とはズレていたということは少なからず起こり得ます。
ゆえに、経営層や現場部門の責任者と密に連携して採用したい人材像を固めることが重要です。そして、その際に注意すべきは「現実的に考える」ということです。
経営層や現場部門の責任者が考える採用したい人材像は往々にして「高望み」になりがちです。
実務経験が豊富であること、コミュニケーション能力が高いこと、明るく素直な性格であること、自社の年収水準で採用できること、等々。
一つ一つの要件は妥当であっても、それらの要件が組み合わさることで「そんな超優秀人材はどこにもいないし、いたとしてもウチの会社で採用できるわけがない」と思わざるを得ない、非現実的な採用したい人材像が出来上がります。
だからこそ、採用担当者は、ダイレクトリクルーティングサービスの利用者情報などを元に、現実的な採用したい人材像を固めていく必要があります。
<現実的に考える上での問い>
- 採用したい人材像に合致するスカウト対象者が一定数存在するか?
- 採用したい人材像の年収相場を踏まえたオファーをできるか?
- 採用したい人材像を採用する上での競合他社に勝てる見込みがあるか?
(2)面接までのコミュニケーションフローを明確にする
ダイレクトリクルーティングサービス利用者は企業理解度が浅く、志望度も高まっていない状態であることを前提に、いかにして面接へと繋げていくか?
スカウトに成功して終わりではなく、スカウトを始まりとした面接までのコミュニケーションフローを明確にする必要があります。
具体的には、面接の前段階に企業理解や志望度向上を目的としたコミュニケーション機会を設けることが推奨されます。この時、一般公開されている会社説明会や採用イベントへの参加を促すことはできる限り避けましょう。
「わざわざスカウトをしてくれたのだから個別対応してくれるだろう」。
そんな期待を持っているダイレクトリクルーティングサービス利用者に対して、誰でも参加できる機会を提供してしまうと「スカウトとは名ばかりで単なる営業メールだったのか…」と興覚めしてしまいます。
それでは、どのようなコミュニケーション機会が望ましいのでしょうか。絶対的な正解はありませんが、現場部門の社員との個別面談を設ける形が無難ではあります。
(3)面談・面接担当者を決定する
優秀な人材が常に不足する今の時代、候補者を選ぶ(評価目的のための)面談・面接と同じぐらいに候補者から選ばれる(選考辞退防止のための)面談・面接が重視されています。
候補者から選ばれるための面談・面接では「候補者満足度」を高めるコミュニケーションが必要です(※候補者満足度とは面談・面接に対する候補者の満足度を指します)。
この候補者満足度に第一に影響する要素は「面談・面接担当者」です。面談・面接が人と人のコミュニケーションである以上は互いの相性の良し悪しの影響は無視できません。
例えば、新卒採用で学生との面談をする場合、成長志向の強い学生には、同じ志向性を持つ社員を面談担当者としてアサインすることで候補者満足度を高めることができます。
当然ながら、常に最適な面談・面接担当者をアサインすることは難しいかもしれません。ですが、関係する現場部門との連携を強化しておくこと(人事部門の要請に応じて現場部門のメンバーに面談・面接担当者を担ってもらうことに合意を得ておくこと)を通じて、面談・面接担当者のアサインに柔軟性を持たせることは可能です。
(4)候補者に合った面談・面接を行う
候補者満足度に第二に影響する要素は「面談・面接内容」です。
面談・面接担当者との相性がどれだけ良かったとしても、面談・面接内容がいまいちであれば候補者満足度は半減してしまいます。
候補者に合った(候補者が満足する)面談・面接を実現するためには高度な「面接力」が必要です。
候補者の強みをきちんと引き出す力、候補者が本質的に知りたい情報を見定める力、その情報を候補者に伝わる文脈・粒度感で伝える力。
これらの面接力を上げるには幾つかの方法があります。
(1)面接官トレーニング研修を実施する
面接はある程度のビジネス経験があれば何となくできてしまうものですが、面接力を上げるためには、面接の知識をしっかりと備えておく必要があります。
もし、これまでに面接官トレーニング研修を実施したことがない状況であれば、まずはこういった研修を通じて基礎知識から取り組むことが推奨されます。
面接官トレーニング研修を受講したからといって面接力が劇的に上がることはありませんが、少なくとも面接対応での失態(不適切な発言や対応)を抑える効果は見込めます。
(2)熟練者の面接に同席する
面接力は知識と実践の両輪が回ることで初めて向上します。
実践という意味では、熟練者の面接に同席して一挙手一投足を観察することがお勧めです。可能であれば、自身の面接を熟練者に見てもらい、個別具体的な改善点についてのフィードバックをもらうことを推奨します。
(3)ツールを活用する
面接力がスキルである以上は一朝一夕に伸ばすことはできません。ただ、ツールを活用することで自身の面接力を補うことが可能です。
例えば、アンケートツールを活用して候補者がどんな人物でどんなことを知りたがっているのかを面接前に可視化させることができれば、当日の面接を補助する想定問答を作ることが可能です。
近年は、HR(Human Resource)分野のIT面での進化が目覚ましい状況ですので、適切なHRtechサービスを活用するのも良いでしょう。
7. ダイレクトリクルーティングの実践に使えるHRアナリスト
HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げることで内定辞退や選考辞退を防ぎます。
~母集団に頼った採用の限界を突破する~
採用目標を達成する為にどの企業もまず対策をするのが、求人媒体などの見直しや、媒体の数を増やすことに注力します。
流入数を増やせば採用人数は増えるかもしれませんが、それなりのコストが必要になります。また、本当に入社してほしい人の採用には繋がりません。
HRアナリストではそんな従来の採用手法を変え、候補者満足度を上げることで内定辞退や歩留まりを無くす手法を提案できます。
活用STEP1:アンケートの送付
必要な情報をアップロード(CSVもしくは手動入力)するだけで、候補者にカンタンにアンケートを発行することができます。また、カスタムアンケートを設定することで御社独自のアンケートを冒頭に追加することも可能です。
ダイレクトリクルーティング経由で面談を実施した候補者に、その後の選考に進んでもらうにあたって、実際の面接の前にメールやメッセージツールでアンケートのURLを送付することで簡単に回答してもらうことが可能です。
活用STEP2:候補者の分析(分析シートの発行)
候補者が回答したアンケートを元に8つのタイプに分け、その候補者にあった
「面接に関するアドバイス」
「動機づけのポイント」
を明確にアドバイスいたします(HRアナリストが分析シートを発行します)。
HRアナリストが発行する分析シートには、候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法を記載しています。この分析シートを活用しながら面接を行うことで熟練の面接官と同じような面接が可能になります。
活用STEP3:面接官のアサイン
分析結果をもとに、その候補者に最も適した面接官をアサインすることができます。
※面接官を担当する社員が事前にアンケートに回答する必要があります。
活用STEP4:次の面接官への申し送り
事前に共有したいことなどを次の面接官へ申し送りできます。
・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
>> CONTACT | HRアナリスト (hr-analyst.com)
著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社