新卒採用でターゲット大学へのアプローチ手段として定着しているリクルーター制度。
近年では多様化する求職活動に対応するべく、新卒採用・中途採用問わずにリクルーター制度の活用にスポットライトが当たっています。
そこで本稿では、リクルーター制度に興味がある方、リクルーター制度導入を具体的に検討中の方、リクルーター制度の運用に課題感がある方に向けて、リクルーター制度を成功させる上で役立つ情報をお届けします。
目次
リクルーターが求められる背景
多様化する求職活動
リクルーターが必要とされる背景の一つに、求職活動の手段が多様化が挙げられます。
就職活動では1990年代後半のインターネットの普及と共に誕生した就活サイト一強の時代が暫く続きますが、2010年前後から新卒紹介サービスが台頭し、それからスカウトサービスやOB訪問サービスのようなマッチングサービスが使われていくようになりました。
転職活動では転職サイト→スカウトサイト→人材紹介サービスの流れで求職活動の手段の多様化が進みました。近年では副業マッチングサービスのような転職潜在層でも活用できるサービスが普及しつつあります。
就職活動でも転職活動でもマッチング型のサービスが増えている中、それらのサービス上でのスカウト活動を担うリクルーターの活用が注目されています。
新卒採用戦線の変化
株式会社ディスコの調査によると、学生が就職決定企業で働きたいと具体的に思ったタイミングの1位は「面接等の選考試験を重ねていく中で徐々に」でした。この結果には想像通りと思われる方が多いと思います。
参考:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ|キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果(2020年7月発行)
ここで注目すべきは2位の「インターンシップに参加したとき」です。前年よりも3.4ポイント伸びています。1位に迫る勢いです。
就職決定企業で働きたいと具体的に思ったタイミングが「インターンシップに参加したとき」である学生が増えている状況は、新卒採用戦線の主戦場がインターンシップに移行する流れ、新卒採用の早期化が加速する流れにあると解釈できます。
また、採用広報の開始月(2018卒~2020卒は3月)より前に、学生とリクルーターの接触が増えている調査結果からも、新卒採用の早期化の流れを感じ取ることができます。
<参考:キャリタスリサーチ|2020年卒「リクルーターとの接触経験」(2019年9月調査)>
この変化する新卒採用戦線に対応するために、これまでリクルーター活用をしていなかった企業のリクルーター活用の機運が高まっていくことが推察できます。
リクルーターの6つの役割
リクルーターの役割は抽象的には母集団形成・見極め・動機形成の3つに分かれますが、具体的なリクルーターの活動内容で整理すると6つの役割に分けることができます。
1. 大学訪問(新卒採用の母集団形成)
リクルーターが自身の出身校にアプローチします。キーパーソン(キャリアセンターや就職担当教員/研究室やゼミの教授/部活動やサークルの顧問)に対して学生の紹介をお願いすることもあれば、学内セミナー(企業説明会)を打診することもあります。
2. OB訪問対応(新卒採用の母集団形成)
自社へのOB訪問を希望する学生への対応をリクルーターが担当します。OB訪問の需要は一昔前までは人気企業に限られていましたが、近年は「Matcher」や「ビズリーチ・キャンパス」等のOB訪問サービスを活用することで企業ブランド(人気企業か否か)に依存しないOB訪問の機会創出が可能になっています。
3. スカウト活動(新卒採用・中途採用の母集団形成)
求職者の応募を待つだけでなく、攻めの採用としてリクルーター自らが求職者を探す役割を担います。主に活用するのはスカウトサービスです。スカウトと聞くと中途採用のイメージが強いかもしれませんが、新卒採用でも「OfferBox」や「iroots」等のスカウトサービスが一般化しています。
4. 広告塔(新卒採用・中途採用の母集団形成)
社員代表として会社説明会や社員座談会に参加する、インターンシップの際にメンター(指導者)として学生と接する等、リクルーターが企業の広告塔の役割を担います。基本的には母集団形成のための広告塔ではありますが、「何をするかよりも誰と働くか」と言われるように、魅力的なリクルーターには求職者の動機形成(自社への志望度を高めること)においても大きく貢献します。
5. リクルーター面談(新卒採用・中途採用の見極め)
OB訪問や学内セミナー等で接点を持った学生、プレエントリー段階の学生への面接の役割をリクルーターが担当します。リクルーター面談は採用スケジュール上の早期から実施することが多いため、表向きはOB訪問の体裁をとることもあります。しかし、「リクルーター面談はOB訪問や軽い面談で選考とは無関係のように見せかけて実際は選考している」という認識が学生の間には広まっているので、初めからリクルーター面談の目的を開示する誠実さを示すことが推奨されます。
※中途採用では「カジュアル面談」と呼ばれるケースが一般的ですが、リクルーター面談のように定義が一般化していないがゆえに、求職者によって解釈に違いが生じるケースが多い点は要注意です。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
参考|カジュアル面談で「すれ違い」が起きる原因と対策|HR analyst lab
6. 候補者フォロー(新卒採用・中途採用の動機形成)
候補者(選考フェーズの求職者)の動機形成目的の面談をリクルーターが担当します。志望度低下による選考辞退を防ぐために選考フェーズで実施することが一般的です。面接の前後にメールや電話でフォローを入れるだけでなく、面談の場をセッティングして丁寧にフォローをすることもあります。
リクルーター制度の3つのメリット
メリット1. 質重視の母集団形成ができる
母集団形成施策の基本は質より量です。多額の広告予算を投下することで母集団を大きくすることを目指します。喩えるならば “砂金の山をスコップですくう” ようなものです。
一方で、リクルーターが担う母集団形成は量より質を重視することができます(自社と相性の良いターゲット大学に絞ってアプローチする、自社に適した人材をスカウトする等)。喩えるならば “砂山の中にある小さな金の1粒1粒を人の手でつまむ” ようなものです。
採用活動が目指す成果は「質か量か」ではなく「質も量も」であることから考えると、リクルーター制度のような質重視の母集団形成施策を用意しておくことが推奨されます。
メリット2. 優秀層との早期接触
優秀層に早期接触できること。これもリクルーター制度のメリットです。
優秀な人は周りが放っておかないとでも言うべきか、優秀層は教授や知人の紹介・ヘッドハンティング・スカウト等を通じて企業と接点を持つ傾向にあります。ゆえに、優秀層に対しては自己応募を待つだけでなく、企業側からアプローチする必要性が生じます。
また、就職活動・転職活動の当事者たちの可処分時間の観点でも、アプローチするタイミングは早いに越したことはないと考えられます。
メリット3. 個別対応による辞退防止
“たくさん集めてたくさん落とす” を前提とする一般的な採用活動では、求職者全員に同じ情報を提供し、同じ選考フローにのせる。そういった一律対応がコミュニケーションの基本となります。
これに対して、リクルーター制度では “活躍する人材を発掘して入社を支援する” という考え方の元、一人一人の求職者に合わせて情報を提供し、柔軟な選考フローを提案する。そういった個別対応がコミュニケーションの基本になります。
この個別対応は優秀層とのコミュニケーションに最適です。例えば、優秀層は複数社の内定を獲得することが多いがゆえに、
- 「御社の選考を辞退したいと思います(なぜなら、御社と同レベルの志望度の会社から内定承諾の回答期限を2週間後に切られていて、御社の選考スケジュールでは間に合わないと思うので)」
- 「御社から内定をいただけたことは有難いのですが内定承諾の回答期限までに決断できないので辞退します(なぜなら、第1志望の会社の最終選考結果が出るタイミングには間に合わないので)
といった具合に、選考辞退・内定辞退のリスクは高くなるからこそ、個別対応をする中で優秀層の本音(上記例の括弧内の言葉)を引き出し、選考フローの短縮化や内定承諾の回答期限の延長等の柔軟な対応を提案することが重要になってきます。
リクルーター制度の成否を分ける4つのポイント
1. 社内からの協力を得ること
リクルーターとは「人事部以外の社員で採用活動に協力する者」と言い換えることができるように、リクルーター制度を成功させる上では社内の各部門の協力が必要不可欠です。
各部門が主体的にリクルーター制度に協力する気運を高めるための方法に正解はありません(組織によって正解は変わります)。
ただ、一般論としては「リクルーター制度を導入しますので協力ください。つきましてはこういったルールで運用します」と結論ありきで話を進めるのではなく、採用課題の解決に向けたプロセスを各部門(または経営陣)と連携しながら一緒に進めていく中でリクルーター制度の必要性を検討するような進め方がお勧めです。
そして、リクルーター制度の導入に向けた準備の中で、各部門の懸念事項をどう解消するのかを織り込んだ、血の通った制度設計を進めていくことが望まれます。
※例えば、現場部門の立場で考えるとリクルーターに選ばれた社員の業務量が増えることは大きな懸念材料になるので、リクルーター活動に取り組むことの対価(リクルーター個人の時間外手当や評価方法)をきちんと設計しておくことが重要です。
2. 採用ターゲットの具体化
リクルーター制度の運用成果は一人一人のリクルーターの採用ターゲット(人材要件)理解度に依存すると言っても過言ではありません。
採用ターゲット、つまり、自社にとっての優秀人材の定義のモノサシが明確でない限りは、優秀人材かどうかのジャッジをリクルーターの主観に委ねることになり、それがミスジャッジを誘発する原因になります。
そうならないためにも、採用ターゲットは可能な限り具体化しておくことが望まれます。
<採用ターゲットの項目例>
- 能力要件:業務遂行能力(コンピテンシーレベル、社会人基礎力)
- スキル・経験要件:業務遂行能力を担保するもの(資格、経験年数)
- マインド要件:成果を出すための心構え・思考の傾向(物の見方や考え方)
- 志向性要件:仕事に取り組む上での価値観、キャリア観
3. リクルーター選定
リクルーターはどうやって選べば良いのでしょうか?
最も基本的かつ無難なリクルーター選定の方法は、採用ターゲットの属性(年齢・性別・出身大学等)や経験に合わせることです。
母集団形成の役割を担うリクルーター選定は、ほとんどこの考え方に基づいています。新卒採用では学生と年齢の近い若手社員が自身の出身大学の学生にアプローチし、中途採用では募集職種についての経験を持つ社員がスカウトやカジュアル面談対応をします。
最も合理的ではあるが運用が難しいリクルーター選定の方法は、採用ターゲットの志向や価値観に合わせることです。
成長志向の強い求職者には成長志向の強い社員をリクルーターとして対応させる、ワークライフバランス重視の求職者にはワークライフバランスを実践している社員をリクルーターにアサインする、といった具合に一人一人の求職者に対して適切なリクルーターを都度検討・選定する柔軟性が求められます。
当然、リクルーター制度の運用が大変になりますが、その大変さを許容できるだけの動機形成効果を期待できるため、候補者フォローの役割を担うリクルーターの選定に有効な方法であると言えます。
4. リクルーター教育
リクルーターは社内行事の幹事とは違います。「アナタに任せたから後はヨロシク」では済みません。リクルーター活動は一定の知識と熟練が要求される立派な業務です。
まずは、リクルーターの心構えや守るべきルールを伝える必要があります。「ウチの社員にはこういった基本的なことは伝えなくても分かってもらえているはず」と思われるかもしれませんが、OB訪問によるセクハラ被害が絶えない現実を踏まえると、リクルーターの振る舞いに関する教育は徹底的に実施すべきです。
その上で、リクルーターが自身の活動の質を向上させることができるような教育機会を提供しましょう。具体的にどんな教育が必要なのかはリクルーターに期待する役割によって変わりますが、どのような教育をするとしても覚えておくべき大切な考え方があります。
それは、上司や先輩社員が新入社員の成長を粘り強く支援するように、人事部としてリクルーターの成長を支援することの先に、大きな成果が生まれることを期待すべきであるということです。
リクルーター制度を支援するサービスのご案内
本稿の締め括りとして、リクルーターの役割の一つである「候補者フォロー」に役立てることができる、クラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」をご紹介します。
HRアナリスト
HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げることで内定辞退や選考辞退を防ぎます。
~母集団に頼った採用の限界を突破する~
採用目標を達成する為にどの企業もまず対策をするのが、求人媒体などの見直しや、媒体の数を増やすことです。
流入数を増やせば採用人数は増えるかもしれませんが、それなりのコストが必要になります。また、本当に入社してほしい人の採用には繋がりません。
HRアナリストではそんな従来の採用手法を変え、候補者満足度を上げることで選考辞退や内定辞退を無くす手法を提案できます。
活用STEP1:アンケートの送付
必要な情報をアップロード(CSVもしくは手動入力)するだけで、候補者にカンタンにアンケートを発行することができます。また、カスタムアンケートを設定することで御社独自のアンケートを冒頭に追加することも可能です。
ダイレクトリクルーティング経由で面談を実施した候補者に、その後の選考に進んでもらうにあたって、実際の面接の前にメールやメッセージツールでアンケートのURLを送付することで簡単に回答してもらうことが可能です。
活用STEP2:候補者の分析(分析シートの発行)
候補者が回答したアンケートを元に8つのタイプに分け、その候補者にあった
「面接に関するアドバイス」
「動機づけのポイント」
を明確にアドバイスいたします(HRアナリストが分析シートを発行します)。
HRアナリストが発行する分析シートには、候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法を記載しています。この分析シートを活用しながら面接を行うことで熟練の面接官と同じような面接が可能になります。
活用STEP3:面接官のアサイン
分析結果をもとに、その候補者に最も適した面接官をアサインすることができます。
※面接官を担当する社員が事前にアンケートに回答する必要があります。
活用STEP4:次の面接官への申し送り
事前に共有したいことなどを次の面接官へ申し送りできます。
・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
>> CONTACT | HRアナリスト (hr-analyst.com)
著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社