採用のミスマッチが起きる原因と4つの防止策

2021/04/15

採用活動で最も避けるべきことは何か。それは採用のミスマッチではないでしょうか。

  • 入社を控えている内定者から辞退連絡を受けた
  • 厳正なる選考を通過した人材が活躍できていない
  • 社員が入社早々に離職してしまった

これらの採用のミスマッチは、採用・育成コストの無駄遣い、組織の戦力低下、採用ブランドへのダメージ等のデメリットを生じさせます。マイナス影響の大きさを考えると、採用活動では採用のミスマッチが起こらないように最大限努めるべきです。

本稿では、採用のミスマッチが起きる原因に向き合いながら、本質的に役立ることができる採用のミスマッチの防止策をご紹介します。

 

目次

採用のミスマッチとは

採用のミスマッチとは「採用後に判明する社員と企業のミスマッチ」を指す言葉ですが、広義には「採用活動中に起こる求職者と企業のミスマッチ」を含みます。

採用のミスマッチには様々なケースが考えられますが、代表的なものは下記の2例です。

 

1. 仕事内容のミスマッチ

このミスマッチは求人票に掲載されている仕事内容と求職者が理解・想像している仕事内容との乖離によって生じます。

日本企業では明確な仕事範囲が定められたジョブディスクリプション(職務内容を詳しく記述した文書)が存在しないことが一般的であり、仕事内容は流動的です。

ゆえに、多くの求職者は入社後に「求職時に聞いていた仕事内容と違う、こんな仕事だとは思わなかった」という理想と現実のギャップに直面します。

このギャップの対応は人それぞれです。

ギャップを埋めるための努力をする人もいれば、ギャップを受け入れる人もいます。もちろん、ギャップを拒絶する人もいます。

2. 人間関係のミスマッチ

このミスマッチは部署内のメンバーとの相性や関係性によって生じます。社風(組織風土・カルチャー)とのミスマッチと言い換えることも可能です。

いずれにしても、人と人の相性は社員の働きやすさに直結します。

働きづらい環境は社員の心身に大きなストレスを生じさせ、パフォーマンスの低下・体調不良による離職を誘発しやすい傾向にあります。

 

採用のミスマッチによるデメリット

1. 採用・育成コストが無駄になる

求職者が内定辞退に至った場合は採用コストが、社員が早期離職に至った場合には採用コストに加えて育成コストが、それぞれ無駄になってしまいます。

<採用コスト>

  • 求人媒体掲載費用
  • イベント出展費用
  • 採用パンフレットのDMにかかる印刷費
  • 人材紹介フィー
  • 採用活動に関わった社員の人件費

<育成コスト>

  • 研修費用
  • PCやデスク用品の購入費用
  • OJTに関わる社員の人件費

上記とは別に、早期退職者が生じた場合の欠員補充の採用・育成コストも無視できません。

2. 組織の戦力低下

採用のミスマッチは社員の早期離職やパフォーマンス低下という形で組織の戦力低下を招きます。

特に、新入社員・中途入社社員の採用と早期戦力化を前提とした目標を掲げる部署の場合、採用のミスマッチが生じることで計画の見直しを余儀なくされる事もあり得ます。

3. 採用ブランドへのダメージ

採用のミスマッチを感じた社員や求職者が「自身のキャリアが傷つけられた」という思いから、口コミサービスに悪評を投稿するケースがあります。

就活や転職活動で口コミサービスを利用することが一般化している今の時代、自社に対する悪評は想像以上の範囲に拡散された結果、自社の採用ブランドを傷つけてしまう可能性は十分に考えられます。

 

採用のミスマッチが起きる原因とは

1. 曖昧な人材要件

採用のミスマッチが起きる原因の一つは曖昧な人材要件です。

どんなに母集団形成を頑張っても、どんなに丁寧な選考をしても、人材要件が曖昧な状態では採用に至った人材のミスマッチを防ぐことはできません。

能力、経験、スキル、マインド、志向性、人柄……

人材要件の要素にも色々ありますが、中途採用の場合は経験・スキルの具体化が重要です。新卒採用の場合は志向性・能力(社会人基礎力に定義される能力や行動特性)をいかに具体化するかが問われます。

カルチャーフィットの観点(人間関係のミスマッチを防止する観点)では、自社の社風に馴染む社員の性格や価値観等も可能な限り具体化しておくべきです。

 

2. 非現実的な採用計画

組織内の力学によって生まれる非現実的な採用計画は、採用活動の下流工程(母集団形成フェーズや選考フェーズ)で採用のミスマッチを起こす原因を作ります。

例えば「採用目標は前年度の2倍にするが、リソース(採用予算・工数)は据え置き」という採用計画には無理があります。この計画を実行するとなれば単純計算で前年度の2倍の母集団の選考をこなすために選考プロセスの簡素化が必須です。

当然、面接の見極めが甘くなり、自社の採用基準を満たさない人材の入社が増え、配属部門から『なぜ、こんな人材を採用したのか?(ミスマッチだ)』というクレームが頻発する悪循環を招きます。

 

3. 曖昧な評価基準

曖昧な評価基準も採用のミスマッチを引き起こす原因です。

曖昧な評価基準が面接官による評価のブレを生じさせ、間違った評価を得て内定に至った候補者が自社で入社後に思うようなパフォーマンスを発揮できないまま早期離職してしまう。そんな採用のミスマッチを誘発させます。

人材要件の中でも経験・スキルは「経験年数」「実績」「保有資格」等の形で評価基準の定量化が可能ですが、マインド(責任感や協調性、主体性等)は評価基準の定量化が難しく、定性的で曖昧な評価基準になりがちです。

例えば【責任感】についての評価基準が曖昧な場合に具体的にどんなことが起こり得るのか?

面接で「顧客の要望に答えるために上司の指示に背いて行動したエピソード」を聞いた面接官Aさんは「この人は顧客に対する責任感が強い」と評価をする一方で、面接官Bさんは「この人は与えられた役割に対する責任感が弱い」と真逆の評価をする可能性があります

 

4. 企業理解を促すための情報提供不足

Adecco Groupが実施した新卒入社3年以内離職者に対するアンケート調査を見ると、離職にも様々な理由があることが分かります。

参考:新卒入社3年以内離職の理由に関する調査|Adecco Group

この離職理由の中で採用のミスマッチ(採用活動の内容が直接的に影響するミスマッチ)であると考えられるものは以下の通りです。

  • 自身の希望と業務内容のミスマッチ(37.9%)
  • 待遇や福利厚生に対する不満(33.0%)
  • キャリア形成が望めないため(31.5%)
  • 長時間労働のため(31.2%)
  • 自身の性格と所属先の風土のミスマッチ(19.1%)

仕事内容、待遇・福利厚生、入社後のキャリアパス、労働時間、社風……

企業が採用活動の中で当たり前に提供している情報であるにも関わらず、早期離職者が「希望が叶わない」「不満である」「期待外れだ」「自分に合わない」といった反応を示しているのは自身の企業理解度が甘かったということに他なりません。

ただ、視点を変えれば、企業側の「企業理解を促すための情報提供不足」であると言い換えることもできます。

 

採用のミスマッチを減らす4つの防止策

1. 面接の時間配分の見直し

面接では候補者の見極めに多くの時間を割き、余った時間で「何か質問はありますか?」と候補者の知りたい情報を提供するケースが一般的ですが、この時間配分では自社への企業理解を促すための情報提供は困難です。

情報提供する時間をきちんと確保する必要があります。目安として、面接所要時間の三分の一程度は情報提供の時間に充てられるように面接の時間配分を見直すことを推奨します。

2. 面接前アンケートの実施

自社への企業理解を促すための情報提供が不足しているのであれば、面接中に「当社の企業理解を深める上で知りたい情報はありますか?」と聞けば良いと思われるかもしれません。

しかし、2つの理由でお勧めできません。

  1. 候補者が自身の「企業理解を深める上で知りたい情報」を瞬発的に答えることができない可能性がある
  2. 候補者が欲する「企業理解を深める上で知りたい情報」に関する要望に面接官が瞬発的に答えられない可能性がある

そこで、面接前にアンケートを実施することで、その候補者が企業理解を深める上で知りたい情報の把握に努めることを推奨します。

アンケートであれば候補者は自身が知りたいことをじっくりと考えることができます。アンケート結果があれば面接官も「候補者の企業理解を深める上で知りたい情報」の準備をすることができます。

<面接前アンケート例>

本アンケートは、面接を価値ある機会にするために実施するものです。面接時にはアンケートの回答内容を踏まえた情報提供をさせていただきますので、ご回答のほど宜しくお願いいたします。

Q1. あなたが当社の理解を深める上で、または当社に対する志望度を評価する上で具体的に知りたいこととして当てはまる項目を最大3つまで選択ください。 

□ 事業戦略□ 仕事内容□ 配属先の決定方法□ 待遇・福利厚生□ 入社後のキャリアパス□ 労働時間□ 社風

Q2. 上記設問にて選択いただいた項目に関して、可能な範囲で具体的にご説明をお願いします。※こちらの記入内容が具体的であるほど、面接時に有益な情報をお伝えすることができます。

3. 面接官アサインの最適化

候補者情報を「性別」「年齢」「性格」「志向性やキャリア観」などの要素に分けて管理し、それらの要素群と一致度の高い社員を面接官にアサインすることを推奨します。

そして、その面接官が企業理解を促すための情報提供をする際には、単に客観的な事実情報を伝えるだけでなく、事実情報が候補者にとってどんな意味を持つのかを翻訳するイメージで主観的な補足説明をすることが効果的です。

※候補者と近しいタイプの社員を面接官にアサインすることで、その面接官の主観的な補足説明が、候補者に自然と刺さりやすくなります。

<例>

  • 当社のコンサルタント職の平均残業時間は月60時間です(事実情報)。ただ、年中忙しいわけではなくて。例えば、私の部署の閑散期の残業は月30時間程度なので定時退社する日も普通にあります。〇〇さんのような仕事とプライベートを両立させたい人には業界の中でも働きやすい会社だと思います(補足説明)。
  • 当社は実力主義的な社風です(事実情報)。社内には野心家や成長志向の強い人間が多いですね。中には他人を蹴落としてやるぜ、みたいな独善的な人もいますが、多くの人は紳士的です。チームで結果を出そうという考えが組織に浸透していますし、チームを上手くマネジメントできる人が出世しているので、〇〇さんのように仲間のために頑張ることにモチベーションを発揮できる人はやりがいを持ちやすいと思います(補足説明)。

4. デメリット情報の提示

自社への企業理解を促すための情報には、ポジティブな情報もあればネガティブな情報もあり、それら全てをオープンにしていくことが採用のミスマッチを防ぐ上では重要です。

また、口コミサイトやSNSによって採用情報のオープン化が進んでいる今の時代、ネガティブ情報は積極的に開示していくことが最善手になります。

もちろん、ネガティブ情報をそのまま伝えることには志望度低下のリスクが伴うため、そのネガティブ情報をフォローするポジティブ情報をセットで伝えることを推奨します。

<例>

  • 当社の残業時間は業界内では平均的ですが他業界と比べると多いと思います(ネガティブ情報)。ただ、それは個人の裁量に任せていることの裏返しでもあります。自分で考えることが求められる仕事で労働時間の面ではきつい場面もありますが、だからこそ、成長を実感している社員も多いです(ポジティブ情報)。
  • ここ数年間の当社の業績は低調な状況です(ネガティブ情報)。不安に感じるかもしれませんが、実は、これには新規事業への投資が関係しています。今年度中に投資は完了し、来年度からは新規事業の売上成長が期待できるので、今のタイミングで当社に入社いただくのは好機だと思います(ポジティブ情報)。

 

HRアナリストで採用のミスマッチを減らそう

本稿の締め括りとして、採用のミスマッチによる早期離職を防ぐための面接改善に役立つサービス、面接に特化したクラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」をご紹介します。

HRアナリスト

HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げることで内定辞退や選考辞退、採用のミスマッチによる早期離職を防ぎます。

~母集団に頼った採用の限界を突破する~
採用目標を達成する為にどの企業もまず対策をするのが、求人媒体などの見直しや、媒体の数を増やすことです。

流入数を増やせば採用人数は増えるかもしれませんが、それなりのコストが必要になります。また、本当に入社してほしい人の採用には繋がりません。

HRアナリストではそんな従来の採用手法を変え、候補者満足度を上げることで選考辞退や内定辞退、採用のミスマッチによる早期離職を無くす手法を提案できます。

活用STEP1:アンケートの送付
必要な情報をアップロード(CSVもしくは手動入力)するだけで、候補者にカンタンにアンケートを発行することができます。また、カスタムアンケートを設定することで御社独自のアンケートを冒頭に追加することも可能です。

ダイレクトリクルーティング経由で面談を実施した候補者に、その後の選考に進んでもらうにあたって、実際の面接の前にメールやメッセージツールでアンケートのURLを送付することで簡単に回答してもらうことが可能です。

活用STEP2:候補者の分析(分析シートの発行)
候補者が回答したアンケートを元に8つのタイプに分け、その候補者にあった

「面接に関するアドバイス」
「動機づけのポイント」

を明確にアドバイスいたします(HRアナリストが分析シートを発行します)。

HRアナリストが発行する分析シートには、候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法を記載しています。この分析シートを活用しながら面接を行うことで熟練の面接官と同じような面接が可能になります。

活用STEP3:面接官のアサイン 
分析結果をもとに、その候補者に最も適した面接官をアサインすることができます。

※面接官を担当する社員が事前にアンケートに回答する必要があります。

活用STEP4:次の面接官への申し送り
事前に共有したいことなどを次の面接官へ申し送りできます。

・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
>> CONTACT | HRアナリスト (hr-analyst.com)

 

著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社

 

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弊社提供の人材分析サービス『HRアナリスト』に関しては下記からお問い合わせ(無料)が可能です。