新卒採用においてPDCAサイクルを回すことは重要ですが、目覚ましいスピードで変化する採用市場の環境下でPDCAサイクルを回すのは大変なことです。
- 新卒採用の主戦場がインターンシップに移行しつつある中で、どんなインターンシップコンテンツを企画すべきか?
- 新卒採用の通年化が進む中、自社もその流れに対応すべきか否か。対応する場合は具体的にどう対応するのか?
- 中途採用ではダイレクトリクルーティングに代表される “攻めの採用” の必要性が年々増している中で、自社はどのように対応すべきか?
- 口コミサイトの認知・利用が拡大する転職市場の中で、いかに自社の評判を高めていけば良いのか?
- オンライン採用(会社説明会や面接のオンライン化)の整備をどう進めるか?
このような新規の課題への取組みを織り込んだ採用活動の計画化(Plan)と推進(Do)に手一杯で、相対的に採用活動の振り返り(Check)や改善(Action)が疎かになっている。
このように感じる採用担当者の方は多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、限られた時間の中で効率的に採用活動の振り返りと改善ができる方法を3STEPでご紹介します。新卒採用の成功を引き寄せる「選考フロー起点」の採用活動振り返り・改善メソッドです。
目次
STEP1:選考フロー全体の辞退率と実選考歩留まり率の算出
始めに、選考フロー全体の選考歩留まり率を算出します。
<選考歩留まり率の算出手順>
- 選考フローを書き出す
(例)応募→一次選考→二次選考→三次選考→最終選考→内定承諾 - 各選考に進んだ人数を書き加える
(例)応募者300人→一次選考通過者240人→二次選考通過者120人→三次選考通過者60人→最終選考通過者18人→内定承諾者9人 - 選考歩留まり率(次の選考に進んだ割合)を算出する
<選考歩留まり率の算出例>
この選考歩留まり率は、このままでも活用可能ですが、辞退者の存在が加味されていない点(辞退者も選考落選者として扱っている点)は取扱注意です。
採用を成功させる観点では「辞退者を減らすこと」も重要なファクターになるため、辞退率と実選考歩留まり率(選考落選者から辞退者を差し引いた実質的な選考対象者の選考歩留まり率)をそれぞれ算出します。
<辞退率と実選考歩留まり率の算出例>
STEP2:選考フロー全体のボトルネック分析
次に、選考フロー全体の辞退率と実選考歩留まり率をもとに、ボトルネックがどこにあるのかを分析します。
※ボトルネックはビールやワインの瓶の細長い首の部分を指す言葉です。ビジネスシーンでは全体の成果に影響を及ぼす箇所(業務工程の中で問題となる部分)をボトルネックと呼びます。
ボトルネックを探す
STEP1の算出例の選考フロー全体の辞退率は以下の通りです。
- 一次選考前辞退率:3.3%
- 二次選考前辞退率:12.5%
- 三次選考前辞退率:4.2%
- 最終選考前辞退率:1.7%
- 内定承諾前辞退率:50%
この辞退率を眺めると、明らかに数値が高い「内定承諾前辞退率」がボトルネックに見えますが本当にそうなのでしょうか?
ボトルネックは改善できる余地があってこそのボトルネックです。内定承諾前辞退率(内定辞退率)50%という数値の改善余地を調べる必要があります。
例えば、新卒採用の市場データを調べてみると、内定承諾前辞退率50%は市場の平均値であることが分かります。ゆえに「市場平均値の内定承諾前辞退率50%をゴリゴリ改善できるのだろうか?」という問いを考える必要があります。
一方で、前期(前年度)の新卒採用の内定承諾前辞退率が30%だったとすると、「1年前はこれだけのパフォーマンスを出せていたのだから同水準までは改善できるはず」と考えることができます。
このように、市場データや過去実績との比較を重ねることで本質的な(改善余地の大きい)ボトルネックが見えてきます。
ボトルネックが生まれた原因を探す
ボトルネックは何故生まれたのでしょうか。その原因を考えることが効率的で効果的な改善策の発見に繋がります。
ボトルネックが生まれた原因を探す際のポイントは「要素の変化」です。ボトルネックが生まれる前後で変わった要素を徹底的に調べます。
<辞退率・実績考歩留まり率の悪化に影響する要素例>
- 選考時期
新卒採用では選考時期を早める程、候補者に占める優秀層の割合を高めることが可能ですが、優秀層には採用競合が多く、辞退リスクも高まります。 - 選考期間
選考回数の多さや、選考スピードの遅さを起因とした選考期間の長期化は、候補者の就活スケジュールに合わせられずに辞退されてしまうリスクを高めます。 - 面接内容
面接の基本は候補者の見極めですが、採用競争が激化する状況下では、面接時に候補者を口説き、志望度を高めることがより重要になります。 - 面接官
候補者は面接官の印象・振る舞いから会社の姿を想像します。面接官の人選を間違えると辞退率を悪化させる主因に発展するリスクがあります。また、面接は面接官の面接スキルに依存する側面があります。面接スキルに乏しい面接官が本来通過させるべき候補者を落選させている(実選考歩留まり率を悪化させている)可能性に配慮する必要があります。 - 応募ハードル
- 応募数を増やす目的で応募ハードルを下げると、選考通過基準に達しない候補者が増え、実選考歩留まり率が悪化します。また、自社への興味が希薄な(記念受験や滑り止め目的の)候補者が増え、辞退率が悪化します。
<ボトルネックが生まれた原因を探す例>
この例のようにボトルネックが生まれた原因を深掘っていくと、ボトルネック解消の対策として何をすれば良いのかの輪郭が見えてきます。
STEP3:ボトルネックを解消する改善策の検討
最後に、ボトルネックが生まれた原因からボトルネックを解消する改善策を検討します。
<改善案の例>
上の3つの改善案について、どの改善案が筋が良いのかを順番に見ていきます。
まず、改善案1(最終面接官を社長に戻すことで、内定承諾フェーズの辞退率を改善する)について。
面接官を社長から役員に変えた結果が悪かったのであれば元に戻せば良いというのは至極真っ当な改善案です。しかしながら、社長が最終面接官を交代した意図や役員の立場を考慮すると現実的ではない可能性があります。
(改善策が現実的であることは極めて重要です。理屈は正しくとも実際に実行することが難しい改善策は筋が良いとは言えません)
次に、改善案2(応募ハードルを上げることで全体的な辞退率を改善する)につい
この案は一見すると筋が良さそうですが、選考フローのボトルネック(内定承諾フェーズ)からは遠いフェーズ(応募フェーズ)の改善になる点が気になります。初期の選考フェーズ(一次選考~二次選考)での辞退率は改善する期待が持てますが、内定承諾フェーズの辞退率改善にまで影響があるかどうかは未知数です。
(改善策はボトルネックに近い選考フェーズの改善であることが重要です。ボトルネックに “直接的に効く” 改善であること、と言い換えることもできます)
最後に、改善案3(最終面接前に志望度アップを目的にした「面談」を設ける)について。
この案は今期の最終面接官を務めていた役員に不足している口説き力を補完することに繋がる良案です。役員のメンツを潰さない意味で現実的であり、ボトルネック(内定承諾前辞退率)に近い選考フェーズの改善である点からも、筋が良い改善案であると言えます。
後は、筋の良い改善案をボトルネックを解消する改善策として実行あるのみです。
選考フローの改善に関するFAQ
【Question】選考フローは募集職種によって変えるべきでしょうか?
変えるべきです。
採用選考とは候補者の持つ適性・能力が募集職種の職務を遂行できるかどうかを見極めることが目的ですから、募集職種が違えば面接官や面接内容、選考フローに違いが出るのは当然です。
一方で、採用選考を受ける候補者には「自分の適性・能力をきちんと引き出してくれる面接官が良い」「企業への志望度を判断するために必要な情報を提供してもらえるような面接内容が良い」等のニーズがあります。これらの要望に応える上では、候補者ごとに面接官や面接内容、選考フローを変えることが望ましいと言えます。
【Question】企業は選考辞退を防ぐ観点で選考スピードを速めた方が良いと言われますが、具体的には何をやるべきでしょうか?
選考スピードを速めるということは、選考期間を短くすることと同義ですので、選考期間を要素分解(細分化)した上で、各要素の期間を短くできないかを検討すると良いでしょう。
<選考期間の要素>
- 応募から書類選考の実施までの期間
- 書類選考の実施から書類選考の結果連絡までの期間
- 次回面接日程調整のやり取りにかかる期間
- 次回面接日程の確定から、実際の面接日までの期間
- 面接実施日から面接の結果連絡までの期間
- 選考回数
具体的にやるべきことでお勧めなのは、面接回数を減らす・書類選考を廃止する等の選考期間の大幅短縮に直結する「選考の簡略化」の検討です。
また、自社の選考スピードの遅さが選考辞退理由となる状況とは、候補者が応募している他社の選考スピードが速い状況にあるとも言い換えられますので、候補者の就活・転職活状況(他社選考の進み具合)に応じて選考スピードを速める対応をする「選考の個別対応」を検討するのもお勧めです。
辞退率の改善に役立つサービスのご案内
本稿の締め括りとして、辞退率の改善(選考辞退防止)に役立つサービス、面接に特化したクラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」をご紹介します。
HRアナリスト
HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げることで内定辞退や選考辞退を防ぎます。
~母集団に頼った採用の限界を突破する~
採用目標を達成する為にどの企業もまず対策をするのが、求人媒体などの見直しや、媒体の数を増やすことです。
流入数を増やせば採用人数は増えるかもしれませんが、それなりのコストが必要になります。また、本当に入社してほしい人の採用には繋がりません。
HRアナリストではそんな従来の採用手法を変え、候補者満足度を上げることで選考辞退や内定辞退を無くす手法を提案できます。
活用STEP1:アンケートの送付
必要な情報をアップロード(CSVもしくは手動入力)するだけで、候補者にカンタンにアンケートを発行することができます。また、カスタムアンケートを設定することで御社独自のアンケートを冒頭に追加することも可能です。
ダイレクトリクルーティング経由で面談を実施した候補者に、その後の選考に進んでもらうにあたって、実際の面接の前にメールやメッセージツールでアンケートのURLを送付することで簡単に回答してもらうことが可能です。
活用STEP2:候補者の分析(分析シートの発行)
候補者が回答したアンケートを元に8つのタイプに分け、その候補者にあった
「面接に関するアドバイス」
「動機づけのポイント」
を明確にアドバイスいたします(HRアナリストが分析シートを発行します)。
HRアナリストが発行する分析シートには、候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法を記載しています。この分析シートを活用しながら面接を行うことで熟練の面接官と同じような面接が可能になります。
活用STEP3:面接官のアサイン
分析結果をもとに、その候補者に最も適した面接官をアサインすることができます。
※面接官を担当する社員が事前にアンケートに回答する必要があります。
活用STEP4:次の面接官への申し送り
事前に共有したいことなどを次の面接官へ申し送りできます。
・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
>>CONTACT | HRアナリスト (hr-analyst.com)
著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社