「内定者フォローを効率的かつ効果的に行うための体系的な知識やノウハウを得たい」
「内定者フォロー施策を実施しているが上手くいかないことが多くて悩んでいる」
「オンライン採用が普及する中での内定者フォローの考え方を知りたい」
本稿では、これらの課題や悩みをお持ちの方に向けて、本質的な内定者フォローの必要性とオンライン採用時代の内定者フォロー施策をまとめて解説します。
目次
1. 内定者フォローとは
内定者(内定フェーズの候補者)の辞退を減らす取り組みを意味する内定者フォロー。近年は内定者フォローの必要性がより高まっていると言われます。それは何故でしょうか?
内定者フォローの必要性
就職みらい研究所の調査によると、2020年卒採用において企業は採用予定数の1.75倍に内定を出したが約半数に辞退されていたことが分かります。
採用数充足に苦戦する状況下で、企業はどのくらいの人数に内定出しを行っているのだろうか。採用予定数や面接人数、内定出し人数などを尋ね、「採用予定数を100」とした場合の「面接人数」「内定出し人数」「内定辞退人数」「内定数」を算出したところ(グラフ④)、「内定出し人数」は175.0で、現行の採用スケジュールが開始された17年卒採用の165.8から増加している。また、「内定辞退人数」は83.1で、17年卒から9.0増加。「内定数」は89.5で17年卒から2.2減少した。20年卒では、採用予定数の1.75倍の学生に内定を出し、そのうち半数近くが辞退したことになり、17年卒に比べると、採用予定数を満たすためのハードルが高まっていることがうかがえる
企業は内定辞退者が出ることを織り込んだ上で内定出しをしているにも関わらず、実際の内定承諾者数(内定数)が採用予定数を1割超も下回っている現実を踏まえると、内定者フォローの必要性を感じ取ることができます。
内定者はどんな内定者フォローを求めているのか?
株式会社ディスコの調査によると、内定を得た企業に就職するかどうかを決めるために必要だと思うフォローの1位は「現場社員との面談」、2位は「人事担当者との面談」でした。
「就職先を決めるという重大な意思決定の前に企業理解(仕事理解)を深めたい」。そんな内定者の気持ちを察することができます。
参考:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ|キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果(2020年6月発行)
ちなみに、内定者フォローと言うと内定者懇親会のイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、懇親会は内定者同士・内定社と社員の関係性を深める効果が期待できるという意味において十分に価値がある内定者フォロー施策です。ただ、この調査結果を踏まえると、内定者フォロー施策として優先的に検討すべきは「社員との面談」であると考えられます。
2. 本質的な内定者フォローとは
内定者フォローとは内定者(内定フェーズの候補者)の辞退を減らす取り組みなのですが、フォローするタイミングは内定フェーズで本当に間に合うのでしょうか?
このように思わざるを得ない背景には幾つかの理由があります。
理由1. 優秀層は内定フェーズより前に辞退する傾向が強い
採用活動における企業と候補者のパワーバランスはシーソーゲームのように変化します。
応募フェーズは候補者優位(候補者が企業を選ぶ状況)ですが、選考フェーズに入ると企業優位(企業が候補者を選ぶ状況)に変化します。そして内定フェーズでは再び候補者優位になります。
しかし、引く手あまたの優秀層の場合はシーソーが常に自身の側に傾いています。通常は企業優位の選考フェーズであろうが候補者は自身が企業を選んでいる自覚を強く持っています。辞退をすることにも躊躇がありません。
つまり、自社が内定を出す以前の選考フェーズで優秀層に辞退されている可能性に配慮する必要があります。
理由2. 内定者の志望企業は「内定前」に決まっているケースが多い
株式会社ディスコの調査によると、学生が就職決定企業で働きたいと具体的に思ったタイミングで「内定が出てから」は4位。
上位3位は全て「内定前」のフェーズであることが分かります。
参考:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ|キャリタス就活 2021 学生モニター調査結果(2020年7月発行)
この事実を踏まえると、内定前=選考フェーズの採用コミュニケーションを改善し、候補者の自社への志望度を高めた状態で内定を出すことが必要であると考えられます。
本質的な内定者フォローとは
本稿では、以上の理由から「内定者フォローは内定フェーズのフォローでは間に合わない」立場を取ります。
そして、本質的な内定者フォローには、内定者フォローの対象を内定フェーズの候補者(内定者)に限定せずに、選考フェーズの候補者(未来の内定者)に対象範囲を広げることが必要であると考えます。
<一般的な内定者フォローと本質的な内定者フォローの対象範囲の違い>
3. オンライン採用時代の本質的な内定者フォロー施策
今、コロナ禍の緊急事態宣言への対応をきっかけにオンライン採用が普及しつつあります。
このオンライン採用は表面的には一時的な変化であるようにも見えますが、オンライン採用の便利さを体験した採用マーケットが綺麗に以前の形に戻ることは考えづらい状況です。
ゆえに、この変化は不可逆的なものであることを前提に、これからのオンライン採用時代の本質的な内定者フォローに取り組む必要があります。
本稿で紹介する内定者フォロー施策を是非ご活用ください。
<候補者の志望度別×フェーズ別の内定者フォロー施策>
内定者フォロー施策1. 採用コンテンツ
採用コンテンツとは採用サイト上での公開コンテンツ(社員インタビュー記事や会社説明動画等)を指します。
採用コンテンツは作り手の想像以上に見られていない悲しい現実がありますが、だからこそ、内定者フォロー施策の中で採用コンテンツを見てもらうように促すことに価値があります。
・どのフェーズの候補者が対象か?
自社への志望度が低い(または不明な)可能性が高い候補者=選考フェーズ序盤に位置する候補者が対象です。採用コンテンツを見てもらい、自社の事業や仕事についての理解を一段深めることで志望度向上を図ります。
・どんな採用コンテンツを見せるべきか?
候補者によって見せるべき採用コンテンツは変えることが理想ですが、最大公約数のニーズとしては会社説明コンテンツを見せることを推奨します。
ただし、視聴に1時間もの時間を要する会社説明会動画を見せることはお勧めできません。
採用コンテンツを見せる対象は自社への志望度が低い(または不明な)可能性が高い候補者ですので、「志望度が低い企業には時間を出来るだけ使いたくない」という候補者側の心理状態に配慮すべきです。
よって、5分程度の時間でサッと読める採用ピッチ資料(自社紹介のWeb資料)を案内することをお勧めします。
採用ピッチ資料を新規に作る必要がある場合は株式会社SmartHRの採用ピッチ資料の資料の内容・構成を手本にすると良いでしょう。
・内定者フォロー施策に採用コンテンツを活用する際のポイント
採用コンテンツを見せる対象は自社への志望度が低い(または不明な)可能性が高い候補者=選考フェーズ序盤に位置する候補者になるので、メール案内が基本です。
具体的には、選考応募時の自動返信メール・書類選考結果連絡メール・面接日程調整メール等に採用コンテンツの案内文を差し込みます。
<メール例文>
【件名】
〇〇〇〇〇)
【本文】
〇〇様
お世話になります。株式会社〇〇〇〇〇の〇〇です。
弊社の選考にご応募いただきありがとうございます。書類選考の結果、〇〇様には次の面接選考に進んでいただきたいと考えております。
つきましては、下記の面接候補日程よりご希望の日程を第3希望までご返信いただけますでしょうか。
<面接候補日程>
・〇月〇日(〇)xx:xx ~ xx:xx
・〇月〇日(〇)xx:xx ~ xx:xx
・〇月〇日(〇)xx:xx ~ xx:xx
・〇月〇日(〇)xx:xx ~ xx:xx
・〇月〇日(〇)xx:xx ~ xx:xx
<面接希望日程記入欄>
・第1希望:
・第2希望:
・第3希望:
また、今回の募集職種と関連のある情報を下記にご案内させていただきます。
・会社紹介スライド
>> https://xxxxxxxxxxxxx
・〇〇職の社員インタビュー
>> https://xxxxxxxxxxxxx
上記の情報は、当社の事業内容と仕事内容の理解が深まる内容となっております。面接対策にもなりますので、お手すきの際にご確認ください。
<メール例文のポイント>
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- 採用コンテンツの案内は本題(書類選考の結果連絡や日程調整の話題等)が済んだ後(メール本文の後半部分)に差し込みます
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- 採用サイトのトップページのURLを案内するのではなく、候補者に合った情報が掲載されている採用コンテンツページのURLを案内します
-
- 採用コンテンツをきちんと見てもらえるように具体的なメリットを提示します(メール例文では「面接対策を兼ねる」ことをメリットとして伝えています)
内定者フォロー施策2. オンライン座談会
オンライン座談会とは複数名の候補者と現場部門の社員がオンライン上で交流する機会を指します。
その場に参加する候補者全体の企業理解や仕事理解を底上げする効果が期待できる施策です。
・どのフェーズの候補者が対象か?
選考フェーズ序盤に位置する候補者がオンライン座談会の実施対象です。QA形式で展開される座談会の情報には採用コンテンツよりも高品質な情報(現場の生情報)が含まれているので、候補者の志望度アップの期待値もより大きくなります。
・オンライン座談会はどんな内容にすべきか?
候補者の知りたいことに現場部門の社員が答えるQA形式を推奨します(通常の座談会と同様です)。昨今のオンラインコミュニケーションツールの機能(例:Zoomのブレイクアウトルーム)を使うことで通常の座談会と遜色のないコミュニケーションが可能です。
内定者フォロー施策3. オンライン面談
オンライン面談とは候補者と面談担当者がオンライン上で面談する機会を指します。
候補者のペースに合わせた企業理解や仕事理解を促す際に効果を発揮する施策です。このオンライン面談は、オンライン面接のデメリットを補完する施策としても有効です(下記参考情報をご覧ください)。
<参考情報>
オンライン面接が一気に普及した2020年の採用活動で明らかになったことは「オンライン面接時の候補者の志望度アップに繋げるコミュニケーションの難しさ」でした。
オンライン⾯接の最⼤の課題は、会社で働くイメージを学⽣が得られないことにあると考えらえる。「会社で働くイメージ」については、対⾯とオンラインで35.1ptの差がある
参考:柴井伶太・佐藤智文・中原淳(2020)「立教大学経営学部 中原淳研究室 オンライン面接の実態に関する調査報告書」
オンラインによる採用活動の課題として、「学生の志望度の見極めが難しい」「学生の志望度を高めるのが難しい」「学生の企業理解を深めるのが難しい」がいずれも6割に上り、現時点では課題を感じる企業も少なくない
参考:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ|2021年卒・新卒採用に関する企業調査-内定動向調査(2020年10月調査)P6
オンライン面接は(対面面接と比較して)自社の魅力を伝えづらいし、実際にオンライン面接を受けた候補者の自社への理解度は落ちている状況があります。
・どのフェーズの候補者が対象か?
オンライン面談は全フェーズ(選考フェーズから内定フェーズまで)の候補者が対象です。
・オンライン面談はどんな内容にすべきか?
オンライン面接のデメリットを補完する目的で、自社の魅力を伝える場・自社への理解度を深める場にすることを推奨します。
具体的には、候補者の志向性・企業選びの軸や自社に関しての知りたいことを把握した上で、その候補者が自社への志望度を高められるような情報を提供することが望まれます。
もし可能であれば、その候補者と相性の良いタイプの社員を面談担当者にアサインすると良いでしょう。
内定者フォロー施策4. オンラインインターンシップ
オンラインインターンシップとはオンライン環境下での職業体験の機会を指します。
「仕事はやってみないと分からない」。この真理から考えても、職業体験は最上の企業理解・仕事理解の機会であることは自明です。
・どのフェーズの候補者が対象か?
選考フェーズの後半から内定フェーズに位置する候補者、かつ、志望度が高い候補者を対象にすることを推奨します。
・オンラインインターンシップはどんな内容にすべきか?
内定者フォロー施策として実施するオンラインインターンシップは、本格的な業務体験、または、現実の業務そのものを任せるインターンシップが理想です。
そうなると、候補者に対しては少なく見積もっても数日間、長い場合は月単位でのコミットを求めることになるので、オンラインインターンシップは希望者に対してのみ実施する形が望ましいでしょう。
内定者フォロー施策5. オンライン懇親会
オンライン懇親会とは内定フェーズの候補者(内定者)同士がオンライン上で交流する機会を指します。
候補者同士が顔を合わせる機会が極端に減少するオンライン採用だからこそ、意識的に候補者同士を繋げる場を作ることに大きな価値があります。
・どのフェーズの候補者が対象か?
通常の内定者懇親会と同様に内定フェーズの候補者(内定者)が対象です。
・オンライン懇親会はどんな内容にすべきか?
内定者同士の自己紹介、先輩社員との雑談、内定者の一体感を醸成するグループワークを実施することをお勧めします。
オンラインでは実施が難しい食事会や職場見学も工夫をすれば可能です。
<工夫例>
-
- 食事会のメニューとなる食材を内定者の自宅に配達しておき、オンライン懇親会当日はオンライン上で皆で同じものを食べる(調理が簡単なメニューに限定/食材はレトルト食品や冷凍食品に置き換えても可)
- オンライン懇親会当日に、人事担当者がZoomに接続したPCやスマートフォンを使い、社内オフィスの様子を中継放送する(オフィスツアーに徹するだけでなく、社員インタビューの様子を見せるのも効果的)
4. 内定者フォローに使えるツール紹介
今回ご紹介してきた内定者フォロー施策は全てフォロー(志望度アップ・動機付け)に特化した施策です。選考とは分ける形でフォロー施策を実施することを想定しています。
しかし、候補者と対面でのコミュニケーションをする面接選考に限れば、選考とフォロー施策の両立が可能です。
もちろん、面接中に候補者を選考(評価)しつつ、フォロー(志望度アップ・動機付け)するためのコミュニケーションをすることは容易なことではありません。高度な面接力を備える熟練の面接官でないと到底できないような離れ業です。
ただ、昨今のHRTechサービスの進化は目覚ましく、熟練の面接官でなくとも高度な面接を実施できるような支援をするサービスも登場しています。
そこで、本稿の締め括りとして、面接に特化したクラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」をご紹介します。
HRアナリスト
HRアナリストは、面接に特化したクラウド型人材分析ツールです。現場の面接官の面接力をアップさせ、候補者満足度を上げることで内定辞退や選考辞退を防ぎます。
~母集団に頼った採用の限界を突破する~
採用目標を達成する為にどの企業もまず対策をするのが、求人媒体などの見直しや、媒体の数を増やすことに注力します。
流入数を増やせば採用人数は増えるかもしれませんが、それなりのコストが必要になります。また、本当に入社してほしい人の採用には繋がりません。
HRアナリストではそんな従来の採用手法を変え、候補者満足度を上げることで内定辞退や歩留まりを無くす手法を提案できます。
活用STEP1:アンケートの送付
必要な情報をアップロード(CSVもしくは手動入力)するだけで、候補者にカンタンにアンケートを発行することができます。また、カスタムアンケートを設定することで御社独自のアンケートを冒頭に追加することも可能です。
ダイレクトリクルーティング経由で面談を実施した候補者に、その後の選考に進んでもらうにあたって、実際の面接の前にメールやメッセージツールでアンケートのURLを送付することで簡単に回答してもらうことが可能です。
活用STEP2:候補者の分析(分析シートの発行)
候補者が回答したアンケートを元に8つのタイプに分け、その候補者にあった
「面接に関するアドバイス」
「動機づけのポイント」
を明確にアドバイスいたします(HRアナリストが分析シートを発行します)。
HRアナリストが発行する分析シートには、候補者の満足度を上げながら面接をスムーズに行う手法を記載しています。この分析シートを活用しながら面接を行うことで熟練の面接官と同じような面接が可能になります。
活用STEP3:面接官のアサイン
分析結果をもとに、その候補者に最も適した面接官をアサインすることができます。
※面接官を担当する社員が事前にアンケートに回答する必要があります。
活用STEP4:次の面接官への申し送り
事前に共有したいことなどを次の面接官へ申し送りできます。
・HRアナリストについてのお問い合わせはこちら
>> CONTACT | HRアナリスト (hr-analyst.com)
著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社