人材採用DX(デジタルトランスフォーメーション)の挑戦テーマ3選

2020/12/25

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは何か。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”

参考:DX推進ガイドライン Ver. 1.0|経済産業省

DXとはデータとデジタル技術を活用した企業活動の変革であり業務効率化のためのIT活用とは一線を画する。経済産業省が取りまとめるDX推進ガイドラインの定義からは、そのように解釈できます。

DXは組織全体で取り組むべきテーマである中、人事部門はデータとデジタル技術をどのように活用して採用業務を変革していくべきなのでしょうか。

本稿では採用DXを「採用領域におけるDX」と定義し、採用DXを実践するための基礎知識をお届けします。

目次

採用DXの実践に必要なマインドセット

応募者の属性データ、適性検査の結果データ、選考プロセス数値(選考通過率、内定率、内定承諾率)、募集チャネル毎の採用コスト……

採用活動で取得・管理する多種多様なデータを活用する強い意思を持つことが採用DXを実践に必要なマインドセットです。

例えば、来期の新卒採用の募集チャネルを検討するシチュエーションにおいて、

「来期は、今期に採用成果が出た人材紹介については継続利用し、採用成果が出なかったダイレクトリクルーティングは利用停止とする」

と、データの表層(単一指標)だけで短絡的に判断するのではなく、

「ダイレクトリクルーティングは採用成果こそ出なかったが、内定辞退者の2名は自社がこれまで採用できなかった優秀層であり、面接で口説ききれなかった点に問題がある。他では出会えない優秀層に出会えている時点でダイレクトリクルーティングの募集チャネルとしての評価は極めて高く、来期も優先的に活用すべきだ」

という具合に、データを入り口にした深い思考に基づいた判断をすることができるかどうか。それはデータを活用する意思の強さに掛かっていると言っても過言ではありません。

採用DXの挑戦テーマ3選

1. 選考プロセスの変革

選考プロセスは候補者(自社に応募した人材)の見極めを第一に考えて設計するものですが、見極めに特化し過ぎた選考プロセスは危険です。

なぜなら、採用には候補者を選ぶ(見極める)側面と候補者から選ばれる側面があり、優秀人材の獲得競争の文脈においては後者の側面が重視されるからです。

候補者から選ばれることを考えるならば、全ての候補者に一律な選考プロセスである必要は全くありません。自社への志望度が低い候補者には口説き目的の面談の場を設ける、他社の選考が進んでいる候補者には自社の選考スピードを速める対応をするなど、選考プロセスを複線的に設計することが望ましいと言えます。

このような候補者から選ばれるための選考プロセスを、候補者を見極めるための選考プロセスと共存させるには既存の選考プロセスを変革する必要性があります。

2. 募集の変革

募集(企業と求職者のマッチング)は採用領域の中で最も目覚ましい変化を続けています。

ダイレクトリクルーティングに代表される攻めの募集へのシフトが進む中、求人サイトに広告掲載して応募を待つ、人材紹介会社に依頼をかけて推薦を待つ、いわゆる待ちの募集に固執し続けるのは(一部の採用強者を除いて)リスクが高いと言わざるを得ません。

自社に応募意思のある人材を待ち続けるのではなく、自ら自社に応募意思のある人材を探し、時には自社への応募意欲を高める思惑のもとにカジュアル面談やミートアップイベントを実施する。

このような攻めの募集を、待ちの募集と上手くバランスを取りながら実現することは、既存の募集を変革することと同義です。

3. 面接の変革

面接時のコミュニケーション内容が候補者の志望度に与える影響は決して無視できるようなものではないことが様々な調査によって明らかになっています。面接官の役割の基本は見極めにありますが、それに加えて口説き(動機付け)の役割も担ってもらう必要性が高まっている。そのように考えられます。

面接官が候補者を口説くためにはどうすれば良いのか。

それは「候補者が自社への志望度を判断する上で必要となる情報を提供する」。これに尽きます(面接官の人的魅力で候補者を惹きつけるやり方もありますが、これは再現性がないのでお勧めできません)。

十人十色・千差万別な候補者に対して、面接官はどのようにして彼・彼女が必要とする情報を把握し、その情報をどんな切り口で伝えていくのか。面接内容そのものの変革が求められる難題ですが、採用DXで挑戦するに相応しいテーマだと言えます。

採用DXの挑戦を支えるHRtech

採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)

採用管理システムは募集から内定に至るまでの一連の採用業務を一元管理するHRtechです。

採用管理システムはHRtechのカテゴリーが生まれる以前から存在し、当時は応募データを効率的に管理する目的(業務効率化のためのIT活用)に利用されていました。現在は求人管理や選考管理などの業務効率化の機能がより充実する一方、データ集計機能を備える採用管理システムも登場しています。

採用管理システムを活用して応募チャネル別・職種別・時期別の応募者数や選考通過率などのデータを分析することで、選考プロセス改善はもちろん、選考プロセスの変革にも繋げることができます。

タレントプール(Talent Pool)

タレントプールは自社に興味を持っている人材や、その時は採用に至らなかった人材を一元管理し、自社への応募意向を高めるHRtechです。

近年、求人媒体や人材紹介サービスでは出会えない優秀層にリーチする手段として積極的に活用されています。

タレントプールで第一にやるべきことは人材をプールすることです。カジュアル面談やミートアップイベントなどの “選考応募を前提としない交流の機会” を作り、自社への応募意向は高まっていないが興味は持っている人材のリストを増やします。

そして、第二にやるべきことはプールした人材リストに対して自社への応募意向を高めるための継続的なコミュニケーションを取ることです。オウンドメディア運用と連携して自社の魅力訴求に繋がるコンテンツを発信する。採用関連のイベントを優先案内する。

このようなコミュニケーションが中長期の時間軸の中で継続になされることでタレントプールは効果を発揮します。募集の変革に大きく貢献することが期待されるHRtechです。

ピープルアナリティクス(People Analytics)

ピープルアナリティクスは人材データを分析し、組織作り(採用・教育・評価・報酬・昇格・異動・退職の仕組みの改善)に活かすHRtechです。

採用領域では、組織のハイパフォーマーを分析し、採用ターゲットの要件定義やコンピテンシーモデル構築に活用できる他、選考に応募した候補者データを分析することで、候補者とのコミュニケーション(候補者体験)を最適化させる活用法も考えられるため、面接の変革には欠かせないHRtechであると言えます。

面接を変革するHRアナリスト

弊社、面接に特化したクラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」はピープルアナリティクスに類するHRtechサービスです。


候補者へのアンケートの依頼・回答・分析結果の閲覧などを一気通貫で実施でき、候補者の入社意欲を高める面接設計、コミュニケーション施策など、約17,000通りの戦術を元に出力された面接マニュアルを利用することで、質の高い面接を実現できます。

下記の3STEPで簡単に活用いただけます。

活用STEP1:アンケート

最初のステップは「アンケート」です。

会社説明会から初回面接までの間に、候補者にアンケートを実施します(アンケートはHRアナリストの機能として用意されているのでアンケートの設問設計は不要)。

アンケートの回答結果は自動でHRアナリストの人材分析にかけられます。

HRアナリストの人材分析は、適性検査のようなブラックボックスが多く不透明なものとは大きく違います。論文をベースとした学術的側面に加えて「この質問をこう答えているならこうなるだろう」という人事の勘や感覚を体系化しているため、分析根拠が明確です。

画像:HRアナリストの人材分析結果例(タイプ情報)

ちなみに、自社の社員にアンケートを実施することで、候補者との相性の良い社員・悪い社員が可視化され、リクルーターや面接官のアサインを最適化させることが可能になります。

活用STEP2:面接マニュアルの読み込み

次のステップは「面接マニュアルの読み込み」です。

HRアナリストが人材分析結果として出力する面接マニュアルには、その候補者のタイプ情報(特徴や人柄・行動特性)が書かれているだけではなく、面接の場でどのような会話をするべきかについて、提供すべき情報・トピックの指示が書かれています。

面接官は、面接マニュアルに記載されている面談・面接の進め方、志望度を高めるトピック、事前質問例などの指示内容を読み込んでおくことで、面接での口説きがしやすくなります。

高度なコミュニケーションスキルを備えていない面接官であっても、面接マニュアルを活用することで、候補者の潜在的な望みを具現化させ、その候補者にとって最も価値のある情報を候補者に伝わるような形で伝えるためのコミュニケーションができるようになります。

画像:HRアナリストの指示内容例(事前質問例)

活用STEP3:面接と振り返り

最後のステップは「面接と振り返り」です。

面接中、面接官はHRアナリストの面接マニュアルの指示内容を活用しながら、候補者を口説くためのコミュニケーションを進めます。

面接では見極めと口説きを両立させる必要性がある中で、口説きに寄り過ぎて見極めが甘くなってしまう、または、見極めに捉われ過ぎて口説きが疎かになる状況に陥らないように、時間配分のバランスに注意を払う必要があります(HRアナリストでは面接マニュアルを活用することで口説くための時間を短縮化できる分、バランスを取りやすいと言えます)。

面接の振り返りでは、面接中の会話の内容(候補者にどんな情報をどう伝えのか、候補者はどんな反応を示したか)と、面接マニュアルに記載されている候補者のタイプ情報(特徴や人柄・行動特性)を照らし合わせながら、「もっとこういった説明をした方が口説きの面では効果的だったかもしれない」と、次の面接に向けた具体的な改善点を考えていきます。

まとめ

今回は採用DXに関する情報をお届けしてまいりました。

採用DXの目的である「競争優位の確立」を実現する手段として、選考プロセスの変革、募集の変革、面接の変革。それぞれの変革の推進を検討してみてはいかがでしょうか。

また、その検討の中で面接に特化したクラウド型人材分析ツール「HRアナリスト」の導入を検討されることがあれば嬉しく思います。

著:池田信人 編:パーソルキャリア株式会社

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